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 タイトル

 【概 要】


   ■まえがき
   ■第1部 林業市場経済理論
   ■第2部 21世紀以降の森林・林業のビジョン

 【目 次】


  ■まえがき

    我が国林業は林家が林業経営悪化による無資金的であることに加え国家も財政難であり、
   一方、林業に不可欠な労力も過疎化・少子化・老齢化により森は荒廃し水害が多発し国産
   材供給比率は2割を切り植栽比率も一桁台でゼロ%的になってしまう程の林業経済情勢の
   ため従前の林業政策を抜本的に改正せざるを得ない時代的要請下におかれています。
    即ち、森林法で規定されています2つの目的である国土の保全も国民経済の発展も共に
   黄信号は過ぎたと読むべき林業経済情勢下におかれています。
    そこで、筆者は我が国林業の再生論を緊急対策と理論的な抜本的対策に分け、前者は
   「水害は人災だ―森は死んでいる―」という題名で既に発行し、抜本的対策の理論編として
   本書を発行致しました。
    緊急対策とは平成16年の京都府豊岡市の水害対策に代表されるように雨台風が襲来
   する度に発生する水害を緊急的にどのように対処するかの方法論を指しています。
    平成18年秋豊岡市は水害跡地に「治水対策祈願」という碑を建立されたとテレビで拝見
   致しましたが、筆者の見解は治山対策には殆どの治水対策は包含されるという見解です。
    つまり、治水対策とは原則として「事前対策」の治山対策で対処が可能であるという見解
   です。
    水害対策についての先人とは拙書では「水害皆無は歴史が造る」という項目で国内では
   「暴れ天竜」を治水した金原明善翁とか昭和43年当時の国会での水害対策事案等を指し、
   国としての例ではドイツとしております。
    従って、本書では緊急編は「水害は人災だ」に譲り、本書発行の第一の目的は現在、森林
   法により規定されています伐採量という「量」を中心とする林業計画経済から木材という材質
   の「質」に重点をおく林業市場経済に意識改革をすべきであるとしております。
    結局、21世紀以降の明るい我が国森林・林業は「イノベート日本林業」に係っております。
    現在の我が国林業政策の基本理念は自給自足林業のドイツが現在も継続して行って
   います伐採量という量が最大となる林業政策のコピーですが、我が国の自給自足率が年々
   低下して2割以下という現在、市場経済にイノベートせざるを得ない蓋然性が認められます。
    昭和43年頃筆者も計画経済下における「生産力増強計画」の事務方の責任者であり、
   当時は花粉症とスギとの因果関係を全く知らなかったとは申せ、結果として国民の多くの
   方々に多大のご迷惑をお掛けし申し訳なかったと長らく心に深く突き刺さっています。
    その後、私は公務員としての自分自身の生き様に署長以前から疑念を抱き更に、私自身
   の公務員としての将来より家族の将来に重点をおいて不動産鑑定士にチャレンジするため
   中途退職致しました。この時の受験勉強に際し、最初に読んだのが「不動産の鑑定評価
   基準」の理論の原本となった櫛田光男著「不動産の鑑定評価に関する基本的考察」であり、
   初めて、この著書の中で市場経済という用語はないものの「市場経済」の考え方、あり方を
   知ることになりました。
    この読書感は、筆者が林野庁計画課国有林担当課長補佐として林業政策の旗振りをして
   きた「伐採量中心の生産力増強計画」及び国有林野経営規定の改正は根本的には間違って
   いたのではないかという疑念でありました。
    開業後、暫くして森林に係る不動産鑑定士の実務補習の講師やら講義が多くなり、極めて
   多く見られる現在の森林評価に係る「不適切な部分」を改訂して本に纏めてお役に立てる
   べきと考えたものの雑務に追われていましたが、10年程前から業務を息子に殆ど任せて
   執筆に重点をおいてきました。
    「森林(林地・立木)評価の大改訂(以下、森林評価の大改訂という。)」を進める中でも
   現在森林法等で進行中の「計画経済」から「市場経済」へ移行すべき蓋然性が多方面で
   出てまいりました。その1つに筆者の造語である林地は立木の元本だという「林地の元本
   理論(本文で解説)」があります。
    森林法第1条でこの法律の目的は森林の保続培養と森林生産力の増進を図り、もって
   国土の保全と国民経済の発展とに資することであると謳われています。
    従って、「水害は人災だ」は森林の保続培養に照らした国土保全のための実務書であり、
   本書及び「森林評価の大改訂」は、林地の元本理論に照らし森林の生産力のみならず
   森林の付加価値を高めて国民経済の発展に資するための立木価格及び林地評価はどう
   あるべきかを論じた本といえます。
    まず、立木の価格は森林法の目的の1つである国民経済の発展に資する価格でなければ
   なりません。つまり、伐採量次元だけでなく「効用、交換価値、市場価値」も加味して決定
   されるべきで林地の価格も伐採量という量次元でなく市場価値を踏まえた立木価格を前提
   として把握されるべきです。
    即ち、林地価格は市場価値を反映した立木価格が有価か負価によって大きく異なる蓋然
   性があります。「森林評価の大改訂」では立木価格が負価の林地価格は立木価格が有価の
   地域の5〜10%であるという小倉流の論理を述べています。
    一方、市場性を有する立木評価方式についても現行の評価方式は立木は成長資産であり
   乍ら10年生から50年生位まで同一価格に試算されるという死に体の方式ですが、市場
   経済理論上林齢に対応した立木価格であるべきですから林齢と整合性のある式として
   息子の康秀が考案した「小倉式立木評価方式」を発表しております。
    このように本書は理論編であり、「水害は人災だ―森は死んでいる―」は市場経済の理論
   編のうちの緊急対策編であり、林業市場経済の実務編は「森林評価の大改訂」ということに
   なります。
    本書の大筋は原則として交換価値の大きい樹種を天然下種(風等によって落下した種子
   による定着・発芽)に重点をおいて施業を行い、地域乃至は林地によっては付加価値の高い
   人工林によるとしております。
    この場合、理論編である以上、太い径級の材乃至は樹高の高い材或は節の少ない材等の
   生産を目的とした生産目標も加味されるべきは当然です。
    現在、森林法で「量」に起点をおいた「標準伐期齢」では原則として各樹種、各地域とも立木
   価格は負価にしか算出されませんから、いわば、死に体の伐期齢と化しています。
   この死に体の伐期齢に替わる「質」に起点をおいた「経済的伐期齢」は「森林評価の大改訂」
   での検討では100年程度と見込まれます。
    なお、経済的伐期齢については40頁の★標準伐期齢に替わる経済的伐期齢の提言を
   参照して下さい。
    生産目標は、北海道から沖縄に至るまでの各地域の実情に沿った生産目標としなければ
   なりませんので一私人の私には適切な資料の収集は勿論のこと結論的に生産目標樹立の
   能力がありません。しかし、現在の国産材供給比率が2割弱及び経済的伐期齢100年程度
   を比較考慮した場合、生産目標樹立に10年程度の歳月を投下してでも全国の林業技術者
   が結集して検討すべき大問題です。
    以上の通り本書では現行の「林業計画経済」を「林業市場経済」へ移行すべき蓋然性だけ
   を記述しております。
    本書における意識改革の概説を平たく申し上げますと1992年10月中国共産党第14回
   大会で提起されました「社会主義市場経済」が実態上は資本主義的市場経済として中国の
   今日の繁栄をもたらした基本的な理論であったと読みますと鴆小平が立ち上げた「市場経済
   理論」の底力が自ずから分かってまいります。
    また、1992年という年は、「森林の持続」がテーマとなった地球サミット開催の年でも
   ありますから森林法の目的と深く関わっており、21世紀以降の日本林業のあり方を誘導
   している年のように想われます。
    日本林業のあるべき林業政策として前述の1992年に中国で提起された「市場経済」は
   森林法でいう「国民経済の発展に資することが可能」だと暗示されていると読むことができ
   ます。
    なお、現在、林学を学んでおられる学生の皆さん、これから林学を学ぼうとする皆様に
   「新しい息吹の生きた林学」、つまり「森林学」とか「森林経済学」の何たるかだけでも
   お気付き頂ければ幸いです。
    最後に、日本林業を再生するための最も大きな原動力は与野党を問わず国会議員の
   方々です。
    先月11月のテレビ討論で管直人民主党代表代行が、来年に「日本林業再生のプランを
   出す」とのことでしたので国会で実行性のあるプランが花開くことを期待しています。
    民主党と言わずに超党派で経済学者を含めて、最終目的である「森林の持続」に如何に
   国政を反映させるかをご審議頂きたいと熱望するものです。
    林業の専門外の方のために専門用語は平たく記述したつもりですので「日本の森林の
   持続」ひいては「世界の森林の持続」のためお力添えをお願いする次第です。

                                      平成18年12月1日小倉康彦
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  ■天国のドラッカー氏からの推薦文

  ■林業市場経済理論のテーマ:
   山を治めることは国を治めること

  ■序 章

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  ■第1部 林業市場経済理論

     プロローグ
   第1編 基本的考察
     はじめに
     第1章 林業市場経済理論の必要性
        第1節 有機的な林学・林業・森林の関係
        第2節 森林法及び森林・林業基本法の目的と各条との整合性
        第3節 林学、森林・林業基本法、森林法、本書の各目的の整合性
        第4節 林業市場経済理論導入の蓋然性
     第2章 林業市場経済理論の基本的考え方
        第1節 森林・林業に係る哲学的・経済学的思考
        第2節 森林の価値
        第3節 効用、価値、価格、正常価格、価額
        第4節 林業市場経済理論の概念
        第5節 不動産の価格に関する諸原則
   第2編 森林の持続は林業市場経済理論が前提
     第1章 経済的植栽基準
     第2章 経済的捨切基準
     第3章 経済的間伐基準
     第4章 経済的伐期齢
     第5章 人工林と天然林の森林の持続の相違
        第1節 人工林
        第2節 天然林
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  ■第2部 21世紀以降の森林・林業のビジョン

     はじめに(編集方針について)
   第1編 ビジョンの概説
   第2編 森林の持続は世界からの命題
     第1章 森林・林業の現況と21世紀以降の林学・森林・林業のあり方
     第2章 林業と森林との相関関係
     第3章 林業の復活と森林の持続との相関関係
     第4章 「森林の持続(終極の目的は林業の復活)」の基本的考え方
     第5章 国内外から見た「森林の持続」が必須な蓋然性
     第6章 森林の持続は公的企業であり乍ら家計は自前
     第7章 21世紀以降の森林施業は原則として天然下種更新
   第3編 白書から読む林業経営分析
     第1章 植林実行比率の推移から日本林業の倒産が予測できる
     第2章 下刈及び間伐の実行比率の推移からの倒産が予測できる
     第3章 不良資産型森林についての白書での警告と本書での分析比較
     参考編第一 見た目がミドリの雑木林の二酸化炭素吸収能力はほんまもんの
             ミドリの人工林の2分の1以下
     参考編第二 見た目がミドリの将来
   第4編 山元立木価格の下落率は丸太価格の下落率より5割程も大きい
     第1章 森林・林業の今後の経営指針の基準は林業市場経済上、丸太価格から
          山元立木価格に改訂すべき
     第2章 現行の伐期齢の期間をほぼ2倍に改訂せざるを得ない蓋然性がある故に
          標準伐期齢に替って改訂すべき伐期齢を経済的伐期齢と命名
     第3章 二酸化炭素吸収量は伐期齢の期間をほぼ2倍に改訂せざるを得ないため
          単位面積当の吸収量は、ほぼ2分の1に低減
   第5編 昭和時代初期の健全型森林と現況の不良資産型森林との比較
   第6編 21世紀以降の森林・林業のあるべき姿の集約
   第7編 平成19年は林業市場経済導入のための林学体系再構築の初年度
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  ■用語解説
     1 立木一代
     2 標準伐期齢と造語の経済的伐期齢
     参考:辻式利回り最大の伐期齢
     3 山元立木価格
     ◎ 参考資料:山元立木価格の実態調書
     あとがき

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